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「今日は先輩がメールしろって言うから一度家に戻ったけど、普段はないよ」 「あ、そうなんだ」 東堂んちは学校から近いからなぁ。って、うちもそうだけど。 カラオケ店の前で、方向が一緒だとかはしゃいで、ノリコやスミたちは野球部の先輩たちと帰って行った。 学校の方向へ帰るのはあたしと東堂、それからユウキ。 「んじゃ行こっか」 東堂がユウキに声を掛けた時、店から1年の女子が飛び出して来た。 「ユウキ先輩!」 高い位置でポニーテイルをきゅっと結って、目がくりっとしてる子だ。 「あたしトイレ行ってたんですけど・・・みなさんもう帰っちゃったんですかぁ?」 「女子マネのトガシさんだよ」 東堂があたしに耳打ちした。 「またかぁ?トガシはトイレ長えんだよいっつも」 ユウキがにやにやしながらトガシさんの髪を引っ張った。 「やめてくださいよぉ先輩。髪崩れるからぁ」 この子、困ったような顔がちょっとチワワみたい。 でも本当は困ってないっぽいよね。 東堂が苦笑しながらユウキに向かって言った。 「俺ら、邪魔っぽいから先帰るわ」 「え~?」 トガシさんは置いてかないで、って顔をする。 でも東堂は知らん顔して、あたしの自転車のカゴにエナメルを放り込んだ。 「・・・さっきの、あれで良かったの?」 角を曲がってから、あたしは小声で訊いた。 「いーんだよ。いちいち付き合ってらんねーし」 |
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